②独特の製造プロセス
・職人による精緻な多色刷りの木版画
和紙を縦、横、斜めに何回も圧縮して細かいしわを作り、絹織物のちりめん布のように加工することは、日本では789~1801年(江戸時代寛政期)の前後から1912 – 1926年(大正時代)頃まで流行しました。ちりめん浮世絵は、和紙をちりめん加工することにより色が鮮やかになることから、海外で人気があり、1868-1912(明治時代)にはさかんに輸出されました。ヴィンセント・ファン・ゴッホがちりめん浮世絵を収集し、『タンギー爺さん』などの背景に書き込んでいたことは、よく知られています。
長谷川武次郎の考案した、ちりめん紙を使った和装本は、柔らかく、縮緬の布に似た風合いから「ちりめん本」、英語圏の国々ではcrepe-paper booksと呼ばれ、海外で人気を博しました。では、ちりめん本がどのように作られたのかを見ていきましょう。
1.翻訳テキストの作成
現代の本の出版と同じように、出版者は、翻訳者に作品を依頼します。作品のテキストができあがると、出版者は、各ページごとにおおまかにデザインを決め、絵師に挿絵の作成を依頼します。多言語で出版される場合など、挿絵がすでに用意されている場合は、挿絵の余白にあわせて、本文を割り付けていったよう。
写真1.英語版「鉢かつぎ」の上からドイツ語を貼り込んだもの。英語版をもとに各国版を作成したものと思われる。
2.挿絵の作成
挿絵は、絵師が描いた絵を彫師が版木に彫り、色ごとの版木を、摺師が何度も重ねて摺って仕上げるという、浮世絵と同じ技法で印刷されていました。版木には桜の木が使われ、また、髪の毛などの細かい部分には 桜よりも硬いつげの木などを埋め込んでいたそうです。江戸時代に発展した日本の木版技術は、明治時代に入ると徐々に衰退したと言われていますが、長谷川の木版は、彫りと刷りの技術が正確で、仕上がりの美しいものでした。
写真2. 木版の摺師 の作業風景(Japanese pictures of Japanese life 2版の表紙、)
3.本文の印刷
本の書名や一部の作品の本文などに木版が使われている場合もありますが、基本的には、本文の文字は欧文活字を使用した活版で印刷しました。
最初に、挿絵の周りにどのように本文を配置するかをデザインします。1ページごとの本文が決まると、そのページで使う文字の大きさと行間のサイズを決め、例えば、1ページ目では小文字のaは10個、大文字のAは1個というように、必要な数を計算して鉛の活字を準備し、その活字を組み上げて版(組版)を作成し、型をとって鉛版を作って印刷します。鉛版は数千枚が印刷の限界で、印刷を繰り返すためにはバラバラにした活字を再度組み直す作業が必要でした。このため、紙で鉛版の型を取ることが行われました。
写真3.紙型(「日本昔噺」シリーズの本文)の写真
4.和紙のちりめん加工
印刷が終わった和紙をちりめん状に加工する際には、「型紙」と「揉台」を使用します。「型紙」は厚い和紙に平行なひだをつけ、柿渋などの混合糊で固めたものです。印刷の終わった和紙に湿気を与え、型紙の上に重ねたものを何層か重ねて心材に巻き、さらに布を巻いて円筒形を作ります。これを揉み台に装てんし、体重をかけて圧縮します。一度和紙をはずしてから、横方向や斜めに方向を変えて再度、型紙に巻き、圧縮するという工程を7回以上繰り返します。これにより、元の大きさの約80%の大きさのちりめん紙が出来上がります。
圧縮によりやわらかい手触りが生まれるとともに、ちりめん紙では元の平紙よりも鮮やかな色彩に仕上がります。
こちらのホームページが分かりやすく大変参考になります。
株式会社大入さま : https://www.ooiri-co.com/soutei_chirimen.html
写真4.揉み台の図(『Japan nach Reisen und Studien im Auftrage der Königlich Preussischen Regierung dargestellt / von J.J. Rein.』2,W. Engelmann,1886. p.487. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12864430 (参照 2024-11-15))
写真5,ちりめん本と平紙本の大きさ比較
5.製本
絞りがおわると、ちりめん状に加工された和紙の四辺を切りそろえます。次に和紙を二つ折りにして重ね、折り山(袋に綴じられた方)を小口にして、背の側に穴をあけて糸で綴じます。これは「袋綴(ふくろとじ)」とよばれる綴じ方です。袋綴では「四つ目綴」などが一般的ですが、長谷川武次郎は、背に近い部分の2箇所に2目または4目の穴をあけて美しい色の絹糸で綴じる「大和綴じ」とよばれる方法で製本しました。また、通常の和装本では、背の上下に角切れという小さな布を貼るだけですが、ちりめん本や平紙本の場合は、背の部分全体に絹の布を貼るなどの加工を施しています。さらに、製本したちりめん本や平紙本を、美しい木版印刷の秩(外箱)に入れることも。
「ちりめん本の印刷・製本」大塚奈奈絵著より
長谷川武次郎の考案した、ちりめん紙を使った和装本は、柔らかく、縮緬の布に似た風合いから「ちりめん本」、英語圏の国々ではcrepe-paper booksと呼ばれ、海外で人気を博しました。では、ちりめん本がどのように作られたのかを見ていきましょう。
1.翻訳テキストの作成
現代の本の出版と同じように、出版者は、翻訳者に作品を依頼します。作品のテキストができあがると、出版者は、各ページごとにおおまかにデザインを決め、絵師に挿絵の作成を依頼します。多言語で出版される場合など、挿絵がすでに用意されている場合は、挿絵の余白にあわせて、本文を割り付けていったよう。
写真1.英語版「鉢かつぎ」の上からドイツ語を貼り込んだもの。英語版をもとに各国版を作成したものと思われる。
2.挿絵の作成
挿絵は、絵師が描いた絵を彫師が版木に彫り、色ごとの版木を、摺師が何度も重ねて摺って仕上げるという、浮世絵と同じ技法で印刷されていました。版木には桜の木が使われ、また、髪の毛などの細かい部分には 桜よりも硬いつげの木などを埋め込んでいたそうです。江戸時代に発展した日本の木版技術は、明治時代に入ると徐々に衰退したと言われていますが、長谷川の木版は、彫りと刷りの技術が正確で、仕上がりの美しいものでした。
写真2. 木版の摺師 の作業風景(Japanese pictures of Japanese life 2版の表紙、)
3.本文の印刷
本の書名や一部の作品の本文などに木版が使われている場合もありますが、基本的には、本文の文字は欧文活字を使用した活版で印刷しました。
最初に、挿絵の周りにどのように本文を配置するかをデザインします。1ページごとの本文が決まると、そのページで使う文字の大きさと行間のサイズを決め、例えば、1ページ目では小文字のaは10個、大文字のAは1個というように、必要な数を計算して鉛の活字を準備し、その活字を組み上げて版(組版)を作成し、型をとって鉛版を作って印刷します。鉛版は数千枚が印刷の限界で、印刷を繰り返すためにはバラバラにした活字を再度組み直す作業が必要でした。このため、紙で鉛版の型を取ることが行われました。
写真3.紙型(「日本昔噺」シリーズの本文)の写真
4.和紙のちりめん加工
印刷が終わった和紙をちりめん状に加工する際には、「型紙」と「揉台」を使用します。「型紙」は厚い和紙に平行なひだをつけ、柿渋などの混合糊で固めたものです。印刷の終わった和紙に湿気を与え、型紙の上に重ねたものを何層か重ねて心材に巻き、さらに布を巻いて円筒形を作ります。これを揉み台に装てんし、体重をかけて圧縮します。一度和紙をはずしてから、横方向や斜めに方向を変えて再度、型紙に巻き、圧縮するという工程を7回以上繰り返します。これにより、元の大きさの約80%の大きさのちりめん紙が出来上がります。
圧縮によりやわらかい手触りが生まれるとともに、ちりめん紙では元の平紙よりも鮮やかな色彩に仕上がります。
こちらのホームページが分かりやすく大変参考になります。
株式会社大入さま : https://www.ooiri-co.com/soutei_chirimen.html
写真4.揉み台の図(『Japan nach Reisen und Studien im Auftrage der Königlich Preussischen Regierung dargestellt / von J.J. Rein.』2,W. Engelmann,1886. p.487. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12864430 (参照 2024-11-15))
写真5,ちりめん本と平紙本の大きさ比較
5.製本
絞りがおわると、ちりめん状に加工された和紙の四辺を切りそろえます。次に和紙を二つ折りにして重ね、折り山(袋に綴じられた方)を小口にして、背の側に穴をあけて糸で綴じます。これは「袋綴(ふくろとじ)」とよばれる綴じ方です。袋綴では「四つ目綴」などが一般的ですが、長谷川武次郎は、背に近い部分の2箇所に2目または4目の穴をあけて美しい色の絹糸で綴じる「大和綴じ」とよばれる方法で製本しました。また、通常の和装本では、背の上下に角切れという小さな布を貼るだけですが、ちりめん本や平紙本の場合は、背の部分全体に絹の布を貼るなどの加工を施しています。さらに、製本したちりめん本や平紙本を、美しい木版印刷の秩(外箱)に入れることも。
「ちりめん本の印刷・製本」大塚奈奈絵著より
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